ソウムメイト2017”啐啄同時”

2006/06/30 [Fri]

海老真薯

 折敷、酒に続いて懐石で出されるのが煮物碗です。
これは懐石のメインディッシュとなるもので、蓋付きの漆器のお碗に入れられて出されます。今回の茶事では海老の真薯(しんじょ)を作りました。白身魚のすり身100gに対して、むき海老200gをある程度の形を残す程度にすり鉢で混ぜ、葛粉と卵白を適量加えて、沸かした二番だしに落として火を通します。レシピにはこう書いてあるのですが、葛粉と二番だしは都合により省略し(吝嗇というわけではありません)、卵白を多めに、白だし醤油を薄めて二番だしの代わりにして練習しました。練習一回目は白身魚をすり身にするところから始めたのですが、沸騰した汁の中で真薯が分解してしまい、当初の半分ほどの大きさになってしまいました。しかもすり方が悪かったのかすり身がボソボソで食感が悪く、さらに火が通っていなかったとみえ試食後腹痛に襲われました。食べたのが私だけだったのは不幸中の幸いでした。それでも二度三度と挑戦するうちに自分なりに工夫して、すり身は自分では作らず出来合いのものを使い(贅沢ですが食感は比べ物にならないほど良くなりました)、卵白をメレンゲ状態にし、ラップで包んで湯煎してみたところ、当日は味はともかく、見た目はそこそこのものになったと思います。
 煮物碗のあとは
飯次(同時に汁かえ)
焼物
飯次(二回目)
酒(二回目)
預け鉢
 亭主食事の後、
箸洗い
八寸
香の物と湯の子
主菓子
 と続きますが、これらはまた後日。明日から初級・中級コースがスタートしますので次回はその復習を兼ねた補足説明をさせて頂く予定にしています。

 いつも茶道関連のお話ばかりで恐縮ですが、来る9月24日(日)、本牧・三渓園にて開かれるお茶会にてお点前をさせて頂くことになりました。当日は表千家流以外にも薄茶席が四席、濃茶席一席、煎茶席二席、香席(香道)一席がございます。茶会券(わりと高額ですが前述の全席に内苑・外苑の入場券、軽食が付いています)ご希望の方は是非お気軽にお問い合わせ下さい。
2006/06/23 [Fri]

折敷の上には…

梅雨に入って横浜は蒸し暑い日が続いています。
 教室は四週目に入り受講日はありませんのでスタッフは粘土の再生や窯焚きなどをしています。七月からはまた新しく初級・中級コースが始まります。少しずつ季節が過ぎて行きますが、毎日素敵な出会いもあります。思いがけず嬉しいお誘いを頂いたり、友人が訪ねて来てくれたり、話したい人から電話がかかってきたり…。素敵な出来事をたくさん集めれば、難しい課題も明るく前向きに取り組んでいけそうな気がします。

 さて前回の続きですが、懐石で最初に出される折敷(おしき)の上には、白飯・汁・向付の三つが載っています。

 まず白飯ですが、これは正式には湯炊き飯といって、一般的な炊き方とは少し違う方法です。文化鍋にといだ米と適量の水を入れ、中火で5~6分してから吹きこぼれない程度に火を弱め、7~8分して中で音がしなくなったら火を強め一呼吸おいて火を止めます。この炊きたての白飯はまだ充分蒸らされていないので水分が多いのですが、まず炊きたてを少し客に召し上がって頂くという亭主の気持ちの表れです。これを蓋付きの飯碗に盛って出します。また盛り方は流派によって違うようです。この後二度、白飯は飯次に入れられて客に供されますが、先ほどの文化鍋から盛られますので、時間の経過によって充分蒸らされた状態になっていきます。客はその都度蒸らし加減の違う白飯を味わうことが出来るわけです。

 次に汁ですが、基本的に夏は赤味噌、冬は白味噌でそれ以外の季節は少しずつ合わせて使います。具は一、二種類で精進が一般的です。汁かえというおかわりがありますので、倍の量を用意します。

 向付は酒肴になるような、例えば生魚に一手間加えたものを盛ります。表千家流では亭主が酒を持ち出すまで客は向付に手をつけません。

 さて先日の茶事では、亭主も厨房も全て一人でやってみましたので、白飯は手が廻らず残念ながら炊飯器まかせでした。機会があれば是非湯炊き飯に挑戦したいと思っております。
 汁の具は冬瓜をゆがいて粉山椒をふりましたが、汁自体は即席のものを使いました。向付は鯛の刺身に軽く塩をして一時間ほど冷蔵庫でねかせ、仕上げに白だしで和えて昆布締め風にしてみました。実際には前もって昆布締めも練習したのですが、昆布が効き過ぎて気持ち悪いモノになったりしたのと、当日は仕入れと仕込みに時間的余裕がなかったために前述の通りとなりました。
 客が11時半に到着するので、10時開店のスーパーに一番で行って向付に使う生魚(刺身)を買おうと思ったら、まだ陳列棚に何もなくて、結局11時前頃に再度行って買いました。しかし限られた種類のものしか手に入らず、前もって魚屋さんに頼んでおけば良かったと反省しきりです。
(さらに次回に続く)
2006/06/16 [Fri]

懐石の流れ

 茶事での懐石はフランス料理のようにほぼ一品ずつ順番に出されます。これは温かいものは温かく召し上がっていただくという、おもてなしの表れです。この流れ(料理を出す順番)を簡単にまとめますと、

①折敷(おしき=ご飯と味噌汁と向付(むこうづけ=昆布締めなどの酒肴)の三品が載っています)
②酒(日本酒)
③煮物椀(真薯など。懐石のメインディッシュです)
④飯次(めしつぎ=ご飯の入ったおひつ。同時に味噌汁のおかわりがあります)
⑤焼物(焼き魚など)
⑥飯次(二回目)
⑦酒(二回目)
⑧預け鉢(和え物や炊き合わせといったおかず)
⑨箸洗い(薄味の吸い物)
⑩八寸(海産物一種類と山のもの(野菜など)一種類の酒の肴)
⑪香の物と湯の子(ご飯のオコゲを使った湯漬け)
⑫主菓子(おもがし=和菓子)
の順です。
 お客は正座さえ苦痛でなければ料理を存分に楽しめるのですが、正客と末客はそれぞれ要所要所に役割がありますので、多少忙しい感はあります。

 さて、これら懐石を盛る器は多くが漆器で、
①折敷、飯椀、汁椀
②杯、杯台(はいだい=杯を載せる台)
③煮物椀
④飯次
⑨箸洗い
⑪湯の子(入れ物の名称から湯桶、湯斗=いずれもゆとう、湯次、湯注=いずれもゆつぎ、とも言います)
⑫菓子器(正式な茶事では縁高=ふちだか、を用いる。正方形の箱状のものを何段か重ねたお重のようなもの)
以上の入れ物が一般的に塗り物です。

陶磁器は、
①向付
⑤焼物(大きめの皿か鉢で陶器が多い)
⑧預け鉢(磁器が多い)
⑪香の物
などで、料理との取り合わせも腕の見せ所です。

その他
②酒は銀、錫、銅、陶器などの銚子に入れます。
⑩八寸は杉木地でできた八寸四方のへぎ盆を使います。
また箸は客用に赤杉両細箸、焼物と八寸に青竹両細、預け鉢、香の物に白竹両細、主菓子用に黒文字(くろもじ)という、片面に樹皮を残した箸を使います。

しかし実際にこれらの道具類全てを揃えるのは容易なことではないので、今回の茶事では以前からある器などを代用しました。
(次回にさらにつづく)
2006/06/09 [Fri]

清流無間断

 前回濃茶の説明をさせて頂いた時に「茶事・ちゃじ」という言葉が出てきました。
 表千家茶の湯入門・下巻(主婦の友社刊)によりますと「茶事こそ、茶の湯における、正式かつ最高のもてなしです。(中略)茶の湯の本来の目的は、この茶事であり、点前に始まる日頃のけいこは、この茶事のための割りげいこともいえるのです。」とあります。「割りげいこ」とは点前の最も基本的な所作(立ち居振る舞い)をとり出して、部分的にけいこすること、とあります。
 茶道教室では主に「薄茶点前」と「濃茶点前」を中心にけいこするのが一般的です(本では稽古をひらがな表記にしています)。薄茶点前とは薄茶を点てる際の所作全般のことです。薄茶を点てるのにまどろっこしい作法があって面倒だと思われる方もいらっしゃるでしょう。テーブルで茶碗にポットからお湯を注いで茶筅でシャカシャカして飲んでも味なんて大差ないと思われるかもしれません。ところが案外そうでもないのです。パスタを食べるのにフォークで食べるか箸で食べるかぐらいの違いはあります。私の場合は独りで薄茶を飲む時も「薄茶点前」をして飲まないと飲んだ気がしません。
 で、再び表千家茶の湯入門・下巻(主婦の友社刊)によりますと「濃茶一服を最もおいしいものに盛り上げるために、炭点前をし、懐石を供し、薄茶をさしあげます。」とあります。茶道ではお茶は一杯、二杯ではなく一服、二服と数えます。それから炭点前とは釜の湯を沸かすために炭をつぐ際の所作、懐石とは食事のことです。
 五月から十月までの時季は風炉という火鉢のようなものの上に釜を載せ(茶道では釜をかけると言い、大寄せの茶会の事もそう言います。例えば、○○先生が××八幡宮で大寄せの茶会を開いた、というのは、○○先生が××八幡宮で釜をかけた、となります。鎌をかける、とは違います)、湯を沸かしてお茶を点てるのですが、表千家流の一般的な風炉の正午(しょうご=昼食がらみ)の茶事の流れは、懐石(昼食)、炭点前、中立ち(なかだち=ハーフタイム。トイレ休憩のようなもの)、濃茶点前、炭点前(最初の炭点前を初炭=しょずみ、二回目の炭点前を後炭=ごずみ、のちずみ、とも言います)、薄茶点前、となります。所要時間は四時間が目安で(と聞くと長いようですが、友達が家に遊びに来て昼食を食べてお喋りしてコーヒーを飲んで帰ったらそんなもんです)その間ずっと正座です(男性の客なら懐石の時などは胡坐だったりします)。茶道を学ぶ者にとって茶事を行うことが最終目標なのですが、一度や二度行えばそれで良いというものではなく、季節や時間帯、そして客組み(きゃくぐみ=客の組み合わせのことで、一般的に客は三人から五人くらいです)によって趣も変わり、まさに一期一会の真剣勝負です。
 常のごとく長くなってきたので今回はここまで。実は先日この茶事を初めて行いましたので、次回その顛末をご報告したいと思います。
2006/06/02 [Fri]

良薬口に苦し

 毎回茶道に関する話ばかりで恐縮ですが、日本の伝統的なやきものは茶の湯とともに発展してきましたので、使われ方についても少なからず説明させて頂こうと思っています。今回は濃茶(こいちゃ)について書いてみたいと思います。
 濃茶に対して薄茶というものがありまして、これは甘味処などでも飲むことが出来る、「おうす」などと呼ばれているものです。それに対し濃茶というのは3倍くらい濃い薄茶と思って頂いて良いと思います(濃いと薄いって漢字、読み違えそう)。子供の頃、薄茶を飲んで苦いと感じましたが、初めて濃茶を飲んだ時はそれ以上の衝撃でした。苦いなんてものじゃなく、あまり濃いのでドロッとした粘性があり、点てる人によっては茶碗を逆さにしてもなかなか流れてこないほどだったりする、飲み物というよりは流動食のようです。どうかと思いますがさらにこれを客全員で回し飲みします。表千家流の場合は皆同じ所から飲みます。もちろん全員同時にではなく、一人ずつ三口くらい飲んでは飲み口を懐紙で拭き、茶碗を隣の客に回していくのです。懐紙で拭くとはいってもただの紙ですから間接キスに相違なく、初めのうちはかなり抵抗があるものですが、そのうち慣れてしまいます(慣れないとやってられません)。正客は最初に飲むのでまぬがれますが、茶道教室では毎回正客というわけにもいきませんし、風邪気味の人が気を使って最後に飲む末客に立候補するという、美しい光景を目撃することもあります。一碗に人数分の濃茶が点てられ順番に飲んでいくのですが、末客のひとり前の人が一番難しいような気がします。というのは飲む量をちょうど一人分(末客分)残さなくてはならず、自分に茶碗が回ってきた時に量が多いとたくさん飲んで調整し、量が少ないとほんの少ししか飲めないわけです。あまり考えないで自分の分をしっかり飲んでしまうと末客の飲む分がなくなり、あっと思った瞬間口から戻すわけにもいかず、自分のところへ回ってきた時には既に少なかったのよ的雰囲気を隣の末客に醸します。仕方なく末客は飲んだふりをしたり、あるいは諦めきれず茶碗に口をつけたまま真上を向いて、濃茶のわずかな残りがゆっくりと口元に達するまで微動だにしない状態を続けたりします。いずれにしろちょっぴり損した気分で、誰が自分の分まで飲んだのか見当をつけながら茶碗を置きます。
 濃茶を点てる亭主としては、だいたい一碗に3~4人分くらいが理想的で、それ以上でも以下でも点てにくいものです。大抵の場合、濃茶に使用するのは樂茶碗です。京焼の綺麗な上絵が施されているような茶碗はあまり使いません。濃茶の点て方も薄茶とは違い茶筅をシャカシャカしません。一般に濃茶は「練る」という表現を使い、濃茶の粉末を適量のお湯で充分に練った後、もう一度適量のお湯を入れてのばして完成です。茶道教室では薄茶点前を数年稽古してから濃茶点前をさせてもらえるようになるのですが、初めのうちは濃さをどれくらいにして良いものかてんで分かりませんし、点て方も見よう見まねで失敗することも少なくありません。ダマになったり茶筅の中央奥に抹茶の塊が入り込んだりしてしまいます。こんなものみんなに飲ませていいのか、というシロモノが出来上がり良心の呵責にさいなまれますが、それを飲んだために客が命を落とすようなことはありません。お茶は古来より薬として服用されてきたと聞かされているので、客は相当マズイ茶でも飲みます。客からお世辞にも美味しいなどと言われると、亭主としてそれはもう嬉しいものです。
 流派によって所作や点て方など様々な相違点がありますが、いずれにしても茶道の最終目標である茶事(ちゃじ)は、この濃茶一服を美味しく召し上がっていただくために亭主が心を尽くすのです。

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