初級・中級コース第2週目
今回はやきものが出来上がるまでの工程をご説明致します。

 まずはじめにやきものを形成している素材ですが、陶器や磁器(前回のやきものの種類をご参照下さい)はほとんどのものが、粘土と釉薬で形成されています。磁器の場合、石を粘土状にして成形しますがいずれにしましても、粘土の素地(きじ=ボディー)の上に釉薬をコーティングした状態がやきものの一般的な状態です。

 粘土は本来、山から掘って来たりして使います。九州地方の唐津焼や有田焼、中国地方の萩焼や備前焼(これは器=せっきです)、東海地方の美濃焼や瀬戸焼などが窯業地(ようぎょうち=やきものを生業にしている地域)として成り立っているのは、もともとそこでやきものに適した粘土が採れたからです。地中などから採取してきたばかりの粘土は、石ころや雑物が多く混じっていますので、それらを取り除いたりして扱いやすくしてから使います。現代では交通機関も発達し、陶芸材料を専門に扱う業者さんも増えましたので、横浜のような陶芸に適した粘土が採れない所でも、日本各地の粘土を取り寄せて陶芸を楽しむことが出来る訳です。釉薬も同様に様々な種類のものが容易に手に入ります。

 こうして入手した粘土を成形するのですが、陶芸には様々な技法があります。手びねりというのは、まさに手だけで(竹べらなどの道具も使います)形を作っていく技法です。小さなものから大きなものまで、丸いものから四角いもの、複雑な形まで作ることが出来ます。
 これに対してロクロ(轆轤)を使って作品を作ると、完全な円形の器を作ることが出来ます。手びねりでは若干の指跡や形状にゆがみが生じやすく、逆にそれが個性にもなるのですが、ロクロを使えば均一な厚みとゆがみのない正確な形状が、短時間にたくさん作れます。しかし工業製品的な個性のない作品になりやすく、また円形以外の形状を作るには不向きであるという面もあります。更にロクロの技術を身につけるのには多少の修練が必要です。
 これらの他にタタラ作りという手法があります。これは、粘土の塊の両側に同じ厚みに加工した板(タタラ板)を同じ枚数置いて、板の上を糸などで引くと、粘土の塊が板の厚みにスライスされ、均一な厚みの粘土の板が出来上がります。板皿などはこの技法で簡単に作ることができますし、この板状の粘土を筒状に丸め、底を付ければ湯呑や花入も作れます。適度な薄さのタタラ板を使えば、成形後の削りの作業を省略できますし、高度なロクロ技術がなくても背の高い筒状の作品を作ることが容易に出来ます。

 手びねり、ロクロでの成形後は次に削りをします。カキベラやカンナを使って、作品の高台(器の底の部分)を削り出したり、作品自体を更に薄手にすることが出来ます。この削りの作業をしやすくするために成形後、作品を半乾きにします。乾燥は粘土に含まれている水分が蒸発するわけですが、それに伴って作品が若干収縮します。この後の工程で幾度も水分が蒸発して、最終的に完成した時には成形時より13%前後小さくなりますので、成形の際の注意点として、完成時の予定の大きさよりも大きく作る必要があるということです。これは手びねり、ロクロ、タタラ作りのどの技法でも共通する事柄です(収縮率はそれぞれ若干異なります)。

 削り作業後、作品を完全に乾燥させてから素焼きします。最高温度は800℃前後です。作品に水分が残っていたり、半乾きのまま素焼きすると、急激な乾燥によって作品が割れてしまいます。この素焼きをする理由は、この後の釉掛けのためで、完全に乾燥させた作品に直接釉掛けすると、素地が水分を吸収し過ぎて壊れてしまうからです。ちなみに完全に乾燥させた作品でも水分を加えて練り、数週間寝かせると元のような粘土に戻ります。

 次に釉掛けをしますが、鉄絵や染付を施す場合は先に絵付けをします。志野焼、織部焼、唐津焼などがそうで、釉薬の下に絵が描いてあるので下絵付けと呼びます。

 釉薬の主成分は大きく分類すると鉱物系と植物系の二種類があります。志野焼の白い釉薬は長石(ちょうせき)と呼ばれる石の一種です。植物系には木灰(もくばい)などがありますが、植物を焼いた後の灰を釉薬として使用します。灰というともうそれ以上価値のない、物質の残骸のようなイメージがありますが、実はガラス質の成分が含まれているのです。植物系の釉薬で最も特徴的なものがわら灰で、これはわらの成分に多量の珪石(けいせき)という石の一種が含まれているからですが、稲という植物はたくさんの米が実ってもその細い茎が折れないように、田んぼの泥の中に含まれる珪石を吸収して、茎を強化しようとする性質があります。そのためわら灰は植物系の釉薬でありながら、鉱物系の白濁した発色が特徴です。
 釉薬を素地に付着させる一般的な手法は、ずぶ掛けと呼ばれる、釉薬を水に溶いたものの中に、素焼きした素地を数秒間浸けるものです。こうすると短時間で作品全体に均一に釉掛けすることが可能ですが、大きな作品の場合、それ全体が浸かるだけの器と大量の釉薬が必要になります。

 最後に本焼きをします。最高温度は1230℃前後で、一般的なやきものなら半日で焼いて、その後数日かけて冷ましてから窯出しします。但し志野焼の場合は、教室では四日間かけて焼いています。
 つまり陶芸は素焼きと本焼きの二度、窯で焼成するわけですが、焼くことで作品は更に収縮しますし、急激な温度変化をすると作品が割れるために、焼成の温度上昇には細心の注意が必要です。

 こうして陶芸の作品が完成します。成形から完成まで早くても1ヵ月、焼き方によってはそれ以上日数がかかります。また初めのうちは成形している時に、作品の完成イメージがさっぱり分からないということもあるでしょう。成形の時よりも小さくなりますし、粘土の色も作っている時とはまるで違う色に焼き上がりますので、いたしかたのないことだと思います。いくつも作品を作って、完成した作品を手に取った時、それまでの成形や削り、釉掛けといった作業を思い返して、陶芸の工程を少しずつ理解することで、次第にコツをつかんで頂けるのでは、と思います。
【2006/07/14 17:31 】 | 未分類 | コメント(0) | トラックバック(0) | page top↑
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