ソウムメイト2017”啐啄同時”

2011/06/16 [Thu]

一本の線

 去る4月30日、京都大徳寺の塔頭、玉林院にて、京都伝統工芸大学校茶道専攻OBによる、お茶会が開かれました。

 「青山緑水」を主題に卒業生が制作した茶道具を中心に、当日は多くのお客様にお越し頂きましたことを、遅ればせながらこの場を借りて御礼申し上げます。

 その席中で、お正客にお座り頂いた男性から、叱咤激励の言葉を頂戴しました。それは、その日に使っていた茶道具の意匠(図柄)について。技術はともかく、絵を描き過ぎている、ということでした。

 その方のおっしゃるには、「一流の絵描きは、一本の線で勝負する。もっと線を減らしたほうがよい。」

 その言葉はまさに核心を突いていました。残念ながら、卒業生の中には、日々の仕事に忙殺されて、或いは金銭的な理由などで、卒業以来茶道から遠ざかっている者も少なくありません。稽古や茶会、茶事などで、道具の取り合わせを日常的に勉強していないと、いわゆる茶味のない作品が出来てしまうことも間々あります。

 ただ、もう一つ考えられることは、「一流の絵描き」に到達するまで、いったい何万本、何億本の線を描き続けなければならないか、ということです。その境地に至るまでは、どうしても一本の線では不安で、自信がなくて、どんどん線を描き足してしまうのではないでしょうか。一流の絵描きも、生まれながらに一本の線で勝負出来た訳ではないでしょう。

 不安で、自信がなくて、それでも描き続け、いよいよその境地に近づくにつれ、描く線の数が自然と少なくなっていくものなのではないでしょうか。

 空間を埋めてしまうほど描き込む若手、空間を生かして一本の線で勝負する一流の絵描き、両者はきっと、確実にもうひとつの線で繋がっているのだと思います。若手作家にはより一層の精進を期待するとともに、今回このような素晴らしい機会を与えて下さった先生、先輩方に感謝申し上げます。

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