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薫風自南来~箱と箱書 後編

 昨日はところにより突風や雹(ひょう)が降ったりしたようですが、横浜はさわやかな日が続いています。5月に入って茶の湯では半年使った炉を塞ぎ、風炉の時季になりました。来週あたりから着物は単(ひとえ)でも良くなります。

 さて、GW前に書いた「箱と箱書」の続きです。

 一つの茶道具に複数の箱が付随しているということがあります。これは茶道具の保護が目的というよりも、その時代時代の所持者が、いかにその作品を重要視したかの証明になります。

 例えば、千少庵(せんしょうあん:利休の義子)の茶杓には、その子、千宗旦(せんそうたん)の箱以外に、表千家七代如心斎(じょしんさい)、九代了々斎(りょうりょうさい)、十一代碌々斎(ろくろくさい)の箱が添っています。また長次郎の赤樂茶碗「一文字」の外箱蓋表には裏千家四代仙叟宗室(せんそうそうしつ)、その蓋裏に表千家五代随流斎(ずいりゅうさい)の墨書があり、これと同様に、流派の違う箱が別々に添う茶道具もあります。

 また、三千家(表千家、裏千家、武者小路千家)の茶席(大寄せの茶会など)ですと、表千家なら表千家の宗匠の箱書の道具で統一されています。表千家の席に、裏千家の宗匠の箱書があるものは原則として出てきません。但し例外があって、千利休から孫の千宗旦(せんそうたん)までの箱書があるものは三千家共通で使います。というのは、三千家はこの宗旦の三人の子供(利休から見て四代目)から、それぞれ分かれたからです。三兄弟が仲たがいをした訳ではないので、現在でも三千家は交流を持っていますが、点前の所作など随分違いがありますので、一緒に稽古をするなどということは出来ません。

 古い宗匠の箱書のあるものほど高額であるとは限らないと、前編で書きましたが、さすがに千宗旦の箱書があるものは、現代の宗匠方のそれよりも数倍、あるいは数十倍の値段がします。中身が全く同じものであっても、当代の宗匠の箱書があるだけで、数十万円違ってきます。実際に千宗旦の道具といっても、めったな茶席ではお目にかかれません。一般的な茶会では当代の宗匠から、先々代の宗匠あたりの箱書のある道具がよく使われています。

 さて、現在の茶道人口のおよそ9割以上が女性なのではないかと思うくらい、大寄せの茶会で男性客にお目にかかることは少なく、一度に30人前後、広間に客が入っても男性はまず居ません。たまにいらっしゃると、記憶力のいい人なら何年か後に会ってもお互い分かるんじゃないかと思うくらい、男性客は印象に残ります。男同士その場で友達になってしまえばより楽しいと思うのですが、世の男性諸氏は私も含め、そのような状況で敢えて男二人で固まるのは却ってニガテなのです。だって周りは美しい女性ばかりに取り囲まれているのですから…。

 話が逸れてしまいましたが、そのような事情で一般の茶会の席主もほとんど女性です。席主というのは茶会を開く人のことで、茶会にはまず茶道具一式必要ですが、ただの道具ではなく各流派の宗匠の箱書があるくらいの茶道具でないと、自他共に認めないという風潮があるようです。これがいつ頃から始まったのか、定かではありませんが、結果、茶会を開くにあたって非常に高価な道具類を多数所持、あるいは購入しなければならず、その費用は家計に多大な影響を及ぼしますから、下世話な話ですが配偶者=夫の年収なども大きく関係してきます。
 
 表千家流ですと先々代の惺斎(せいさい)宗匠、先代の即中斎(そくちゅうさい)宗匠、当代の而妙斎(じみょうさい)宗匠の箱書の道具を目にすることが多く、それ以前の宗匠の箱書のものは、金銭的に高価で希少価値もあるため、あまり見かけません。但し席主が個人ではない、大規模で由緒ある茶会や、有力な茶道具商の後ろ盾のある茶会ですと、美術館や博物館級の箱書のある茶道具が出ることもあります。一般人でも国宝の喜左衛門井戸や、長次郎の東陽坊(重要文化財)に触れる機会があるのです。

 長くなりましたので、これぐらいで…。ではまた。

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