朝夕はめっきり肌寒くなってまいりましたが、横浜は秋晴れが続いて爽やかな毎日です。陶芸教室の前には「ふぞく坂」という名の坂があって、教室に通って来られる生徒の皆さんにとっては、急な上り坂のために評判が今イチなのですが、私はこの坂を教室に向かいながら見上げる空の色が大好きです。そして夕暮れ、坂を下りながら向かいの丘の家並に、明かりが幾つか灯っているのを見ると、とてもあたたかい気持ちになります。一つ一つのあかりの下には家族があって、生活があって、誰かが誰かを思っているのでしょう。秋は何故か感傷的に物事を見せてくれます。

 さて今週の火曜日に、三井記念美術館へ安宅コレクションを観に行ってきました。東洋陶磁のコレクションとして質、量ともに世界でもトップクラスとされる安宅コレクションの名品展です。安宅産業の元会長であった安宅英一氏が精選、収集した約1000点の作品のなかから、中国・韓国の陶磁器の名品126点を選りすぐり、国宝2点(油滴天目、飛青磁花生)、重文11点を含んだ展示です。 また、25年の歳月と情熱をかけてこれらの作品を選んだ安宅英一氏の眼にスポットをあて、コレクション形成の知られざるエピソードを交えて展開させることで、美の求道者の横顔に迫っています。

 展示物の多くに、安宅氏がそれを入手するまでのエピソードなどが詳細に書かれていて、作品そのものよりも、むしろ安宅英一氏のヒトトナリに注目した展示だったような印象を持ちました。日本でも有数の総合商社だった安宅産業は、東洋陶磁の収集にも巨額の社費を投じていましたが、1973年のオイルショックを機に業績が悪化、結局その4年後に吸収合併により解散してしまったそうです。唯一の救いはこれら名品が散逸することなく、大阪市東洋陶磁美術館という、一般公開の道を取られた点に集約されると思います。

 続いて出光美術館の「乾山の芸術と光琳」を観に行きました。乾山とは尾形乾山(1663-1743)、光琳はその次兄の尾形光琳(1658-1716)のことで、弟の乾山は陶芸で、兄の光琳は絵画や漆芸、着物の衣装までを手がけた元禄時代の芸術家です。今回は特に乾山の陶器類が数多く出展されていて、なかなかに見ごたえのある展示になっています。二人の生家は京都でも屈指の呉服商で、家業は継ぎませんでしたが、それぞれ複数の家屋敷と金銀諸道具などを相続しました。しかしこれらには全く執着することなく二人ともそれぞれの芸術性にのみ生涯を捧げました。

 奇しくも時代を超えて、「美」に魅せられた人たちに、どこか相通ずるものを見たような気がします。
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